2010年9月29日水曜日

LaTeX2e入門教室-2.4.3 本文の作成

2.4 簡単な文書作成の実例
2.4.3 本文の作成


次に本文を document 環境に記述していきます。まずは,最初の段落を入力します。入力するときの注意としては,段落の途中で改行せずに入力することです。エディタの種類によっては,入力しにくくなるかもしれませんが,TeXworks では,長い1行を折り返して表示するので,問題なく入力できると思います。

次に2番目の段落を入力しますが,このとき,段落の区切りとして空行を入力します。

なお,段落の先頭は,自動的にインデント(字下げ)されるので,1文字の空白を入力する必要はありません。同様に3番目の段落も空行を入力した後,段落を入力します。ここまでのところのソースを以下のとおりです(このソースでは,本来1行で入力する部分を画面の都合上折り返して掲載しています)。
¥documentclass{jarticle}
¥title{鼻}
¥author{芥川龍之介}
¥date{}
¥begin{document}
¥maketitle
禅智内供(ぜんちないぐ)の鼻と云えば、池(いけ)の尾(お)で
知らない者はない。長さは五六寸あって上唇(うわくちびる)の上
から顋(あご)の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。
云わば細長い腸詰(ちょうづ)めのような物が、ぶらりと顔のまん
中からぶら下っているのである。

五十歳を越えた内供は、沙弥(しゃみ)の昔から、内道場供奉(な
いどうじょうぐぶ)の職に陞(のぼ)った今日(こんにち)まで、
内心では始終この鼻を苦に病んで来た。勿論(もちろん)表面では、
今でもさほど気にならないような顔をしてすましている。これは専
念に当来(とうらい)の浄土(じょうど)を渇仰(かつぎょう)す
べき僧侶(そうりょ)の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったか
らばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしていると云
う事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話
の中に、鼻と云う語が出て来るのを何よりも惧(おそ)れていた。

内供が鼻を持てあました理由は二つある。---一つは実際的に、鼻
の長いのが不便だったからである。第一飯を食う時にも独りでは食
えない。独りで食えば、鼻の先が鋺(かなまり)の中の飯へとどい
てしまう。そこで内供は弟子の一人を膳の向うへ坐らせて、飯を食
う間中、広さ一寸長さ二尺ばかりの板で、鼻を持上げていて貰う事
にした。しかしこうして飯を食うと云う事は、持上げている弟子に
とっても、持上げられている内供にとっても、決して容易な事では
ない。一度この弟子の代りをした中童子(ちゅうどうじ)が、嚏
(くさめ)をした拍子に手がふるえて、鼻を粥(かゆ)の中へ落し
た話は、当時京都まで喧伝(けんでん)された。---けれどもこれ
は内供にとって、決して鼻を苦に病んだ重(おも)な理由ではない。
内供は実にこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだの
である。

¥end{document}
3番目の段落の中で「---」という部分が2カ所ありますが,これは記号の「ダッシュ」に変換されます。このとき「-」が1つの場合は,そのまま記号「-」となり,2つの場合「--」と3つの場合「---」は,それぞれ長さの異なるダッシュに変換されます。

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